こんにちは。土岐市で家づくりを50年以上に渡って携わってきた水野孝治(みずのこうじ)といいます。今日は、岐阜県土岐市で我々がどうして高性能住宅を建てているのかというテーマで記事を書かせていただきました。
少し長くなりますが、お付き合いいただければ嬉しく思います。

高性能住宅とは何のこと?

その前に、高性能住宅とはどんな住宅を指すのか、についてお伝えしていきたいと思います。

まず大切なのは、「高気密高断熱」の家づくりということです。これからご自分の家を建てる皆さんにとって、これこそが譲れない高性能住宅の第一歩だと思っています。

次に、「耐震性能」です。
これは、東日本大震災とその後の熊本地震で認識を新たにしました。
家づくりをされていくなかで、このこともしっかりとご理解していただけたらと思っています。

最後に、「施工」と「サポート」の問題です。
全く同じ材料を使っても作り手の意識が低いと、家というのは上手く機能しなくなります。
また、サポートというのは建てた後の問題で、なかなか建てる前には解りませんが、この部分を判断する基準がありますので、ぜひご一読ください。

この他に、材料の吟味、空間を広く見せる工夫、などといった部分もありますが、紙面の関係で最後に軽く触れておく程度となってしまいました。
このあたりも、会社に来ていただければ、しっかりとした資料をご用意しています。

「高気密高断熱」の水準にこだわる

家づくりを始められた方は、「高気密高断熱」という言葉を聞いた事があるかもしれません。
これは平成に入って出てきた言葉ではありますが、一口に高気密高断熱といっても非常に幅があるのです。
家を建てた時期や、建てている会社によって、高気密高断熱の基準が全く違うという事実をご存じだったでしょうか?
それを避ける為にしっかり数字を使うようにして欲しいのです。

断熱の性能を測る基準として、Q値(キューチ)という言葉があります。
これは、建物から逃げる熱(エネルギー))の量を数値にしたものです。
数値が小さければ、小さいほど断熱性能が高い事を意味します。
現在は、政府はこのQ値の代わりにUA値(ユーエーチ)をいう言葉を使っています。
これは単位は全く同じですが、数値の意味そのものは少し異なります。かなり専門的になるのでここでの解説は割愛しますが、いずれにしてもQ値やUA値は、数字が小さければ小さいほど高性能と覚えておいてください。

そして、当社が家を建てさせていただいている土岐市は、政府が定める地域区分では土岐市は5地域に当たります。
隣の多治見市も5地域ですが、同じ岐阜県でも岐阜市は6地域にあたります。
ちなみに、北海道が1地域と2地域で、沖縄は8地域という事になりますので、土岐市は比較的温暖な地域といってもいと思います。
また、飛騨市、高山市は3地域、中津川市は4地域になります。
岐阜県は山が多いため、高度が高い地域は寒く、平地 の愛知県に近いエリアは温暖だという事がご理解いただけると思います。

その土岐市での、要求される断熱性能は、政府が2020年に義務化を検討している水準でUA値で0.87(Q値2.7)になります。
平成10年前後はこの義務化水準の事を「高断熱」と呼んでいました。

最近では、この上にZEH基準(ゼッチきじゅん)ができました。
ZEHというのは、『ネットゼロエネルギーハウス』の略で、ゼロエネルギー住宅の事を指します。この基準でのUA値は0.6(Q値およそ2.0)となっており、現在ではこの水準の事を「高気密高断熱」という方も少なくありません。

ちなみに、現在当社では全ての住宅のQ値を1.6前後(UA値およそ0.5)で家を建てさせていただいて、当社の場合の高断熱はこの水準を指しています。

なお、「高気密」というのは、すきま風が建物の中を通る事無く、室内の空気を一括して効率よく暖めたり涼しくしたりできる指標の事をいいます。
数値でいえば、C値(シー値)を使います。
C値はすきま相当値といって、建物表面積1平方メートルあたりどのぐらい大きな隙間が空いているかという数値になります。

平成10年ぐらいまでは北海道に限ってC値の基準がありました。
しかし、現在はこのC値は日本の法令からは姿を消してしまっています。
このC値は建物を建設した後に、測る事のできる数値で施工の品質と手順が正しいかという検証にもなります。

平成10年当時北海道ではC値の基準が2.0といわれていました。
当社の住宅の最近の数値は0.6前後ですので、20年前の北海道の3.3倍の性能といっても良いかもしれません。
最近では全棟気密測定を行う会社も増えてきていますが、まだ全体の1割以下でしょう。

振り返りますと、当社でいうところの「高気密高断熱」というのはC値0.6以下、UA値0.5(Q値1.6)以下を指します。
ところが多くの会社はその半分程度の性能でも「高気密高断熱」と呼んでいます。
このような事もあって「高気密高断熱」=高性能住宅という言い方はされなくなってきている、という側面もあります。

「耐震性能」も高性能住宅には不可欠

現在の国が定める建築基準法には、いまだ断熱性能の規定がない(2020年に義務化予定)のですが、耐震性能の基準はあります。

これは、壁の位置、筋交いや構造用合板といった補強材などの組み合わせによって、簡易的に算出する方法と、最近ではCADシステムを使って本格的な高度計算によって算出する方法がありますが、一定以上の建物の地震に対しての強度が求められています。

ただし、この耐震基準では、現状として『震度6強の揺れがきても直ちに倒壊しない事』とされています。
この文章を読んでどう感じられてたでしょうか?個人的には3つ引っかかる点があります。

まず1つは、「震度6強」です。
ご存じのように、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の最大震度は震度7でした。
建築基準法には震度7とはどこにも書かれていないのです。
これは1949年になって始めて震度7という階級が加えられたからという事と関係があるのかもしれません。
いずれにして、我々消費者としては、震度7に耐えられるかどうか?は、建築前に是非とも知りたい事です。

二つめは、「直ちに」という言葉です。
法律用語で直ちにというのは、およそ30分前後を意味します。
最後は、「倒壊」です。
建物に被害というのではなく「倒壊」というのは文字通り崩れ去るという事を意味します。

つまり、この建築基準法の文面を読むと、「震度6強の地震が来たらすぐには壊れないけれども、いずれ壊れるかもしれない」建物ともとれてしまうのです。
最低でも30分は耐えるように作っておくので、しっかり避難してくださいというわけです。
そして、震度7の強い揺れが来たら、倒壊するかもしれないというレベルなのです。

これに対して、政府は耐震等級というものを導入しています。
この建築基準法レベルの建物を「耐震等級1」としました。
この1の1.25倍を「耐震基準2」、1.5倍を「耐震基準3」と呼ぶようにしています。
残念ですがこの3以上の基準はまだありません。

そして、京都大学生存圏研究所の五十田教授は、震度7の揺れが2回襲った熊本県の益城町の調査に入った報告書で、現在の基準法レベルの1.5倍無いと建物が倒壊したと書かれていたのです。

建築業界はこれから一気に「耐震等級3」が普及していくでしょう。
当社でも高性能住宅とお客様にお伝えしている以上、「耐震基準3」を標準に家づくりを行っています。

ちなみに、地震保険では火災保険での補償額の半分までしか保証されません。
つまり、建物が倒壊してしまっても充分な建築費用が降りないという事になっていますので、ますます耐震性能を上げておかないと、皆さんの財産が守れない事になってしまいます。

施工品質を守るために絶対のこだわり

どんなに良い材料を使っても、どんなに良い設計をしても、作り方、作り手が悪いと最悪の結果を招く場合があるのをご存じでしょうか。

例えば、プラモデルを作る事を考えてみてください。
プラモデルは誰が作っても同じ品質が保証されています。
ですが、3歳児の男の子が作った場合はどうでしょうか?小学2年生では?多分、どちらも出来としては今ひとつなのではないでしょうか。
小学5年生くらいの高学年になって初めて、教科書通りのものができあがり、高校生くらいになると色付けなどの細部もしっかりと、大人の作品は値段がついて売れるようになるというわけです。

私はもう50年も家づくりに関わってきているプロとして、プラモデルが趣味の大人以上の完成度で家を提供し、引き渡さないといけません。

ただ、私も年齢的にも数量的にも自分で全部の家づくりをできる訳ではありません。
しかし、私がこれぞ高性能住宅だ、と呼べるくらいのレベルで家を建ててくれる大工さんを、当社では社員として雇っています。
そして、今も大工の教育に力を注いでいます。
それは、当社が胸を張って「高性能住宅です」とお客様にお渡しできる建物を作るためなのです。

残念ですが、この業界の多くは、品質管理をしっかり行っているという理由から、大工を全て外注にしている会社がほとんどです。
つまり、完成したものはチェックをするので、それで良しとしているという事です。

もちろん、人にはいろいろな価値観があります。
管理しているのだから良いのでは?という事もあるかもしれません。
ただ、完成した建物というのは、壁の中がどうなっているのか、家を壊さないと全く知る事ができないのです。

つまり、100%信頼関係が無いと、現場の仕事はお願いできないはずではないでしょうか。
手を抜く大工がいるとは決して思わないのですが、それでも私はお客様を困らせるリスクを取りたくはありませんので、私は大工を自分の社員にすることにあえてこだわりたいのです。

自社の社員であれば、何かあった時も大工がお客様のお宅に駆けつけることができるのです。
これは、社長と息子だけでは充分にできなかったかもしれません。
社員大工がいるからこそ、お客様をお待たせすることなくサポートさせていただくことが可能になったのです。

では、この大工の水準を測る目安を少しお伝えしておきます。
それは、大工がきちんと挨拶ができて、現場をきれいに整理整頓しているかをチェックする事です。
腕の良い大工は、次の段取りを考え、効率良く仕事をしていきますので、仕事に余裕があります。
仕事に余裕があると、お客様がいらした時にきちんと挨拶ができるというわけです。

現場がきれいというのは1つ大きな指針になりますので、これから家づくりを依頼する前に、建築中の現場を見せて貰うというのは、建築会社を決めるうえでも有効なのではと思います。

もちろんその他の材料も大切です。

これだけで高性能住宅ができるという事はありません。
当然ですが、家のパーツ選びもとても大切です。
フロアー材、外壁材、屋根材、窓、ドアの品質などはきちんと吟味をしています。
特に、キッチン、お風呂、トイレは毎日使うものですから、これらの性能もとても重要です。

どれもとても大切ではありますが、多くは既製品を使うことになります。
つまりこの部分は大きな差はグレードの差だけになります。

キッチンは安いものから超高級なものまで、価格差でいえば200万円ぐらいの幅があります。
お風呂もサイズの差もあれば、材料が樹脂、人工大理石、天然石など様々です。価格も大きな違いがあります。
ですが、オリジナル建材というのはほとんど存在していません。
多くは外部からの買い物です。ですので、実質的な差別化はそこでは出しにくいのです。

ところが、お客様の多くはこの部分に着目される方が多いのです。奥様にとっては毎日使う物ですから大切だとは思いますが、可能であれば当社がお伝えした高性能住宅の元である断熱性能や耐震性能などにも目を向けていただきたいと思います。

また、空間を広く見せる工夫も大切です。ですが、これも実際にものを見ていただけないとなかなか文章だけでは表現が難しいのです。
可能であれば一度当社にお越しいただくか、当社が作った建物をご案内させていただけたらと思います。

皆さんが、家づくりをされていくなかで、参考になる記事となれば幸いです。

 

 

有限会社 水野建築 水野建築設計事務所
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